老後2000万円問題を読み解く②
こんにちは。元売れない保険屋Tです。
昨日は老後2000万円問題の発端となった金融審議会の市場ワーキンググループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』の前半戦でした。
前半部分では、社会を取り巻く環境の変化について書きました。
後半ではそのような環境変化の中で、どのように対応をしていくべきかについてです。
ライフステージによる個々人の心構え
現役期
現役時代は、早い時期から資産を形成していくことの有効性を確認し、小額からでも資産形成行動を起こすべき時期です。
元本保証の預貯金も確保しつつ、長期・積立・分散投資による資産形成を図っていけると良い時期です。
また、自らにふさわしいライフプラン・マネープランを検討し、それにあった金融商品を組み合わせていく事が重要です。
一方で、ライフプランの多様化とそれに伴い金融商品も多様化し複雑になってきているので、必要に応じて信頼できるアドバイザーを見つける事も重要です。
長期的に取引できる顧客重視の金融サービス提供者として、僕たちもお客様に選ばれるアドバイザーたる知識・メンタリティを持っている必要があります。
リタイヤ期前後
この時期は、リタイヤ以降の人生が長期化していることから、金融資産の目減りを抑制したり、計画的な資産の取り崩しを実施していく必要があります。
また、退職金を踏まえたライフプラン・マネープランを検討していかなくてはなりません。
高齢期
高齢期においても状況に合わせて資産の計画的な取り崩し方を検討しつつ、認知判断能力の低下や喪失に備えて行動をしていく必要があります。
一般的に認知症の診断等を受けると資産の流動性が低下したり、また身体的な衰えにより金融機関に出向くのが難しくなった場合に備えて事前に準備しておく必要があります。
また介護等自分の心身の衰えを見据えたマネープランを作成しておくことが重要です。
金融サービスのあり方
金融サービス提供者としてどのような顧客サポートができるでしょうか。
社会課題に対する対応
多様なライフプランが考えられる状況や、現在の日本の環境を考えると、各個人の自助の重要性が増しています。このような状況に適した資産形成・管理やコンサルティング機能の強化や、商品・サービスの多様化と見える化が求められています。
また、認知判断能力低下に対応する商品・制度も整備される必要があります。
現役期の顧客への対応
現役期はシニア層に比べ金融資産も多くなく、子育てなど金銭的にも時間的にも生活に余裕が少ない傾向にあります。
そのような中でも老後資金も含めて資産形成をしっかりと行っていかなければならない状況にあります。
金融以外の資産・負債についても含んだ家計のポートフォリオを俯瞰して検討していく必要があるでしょう。それに適したマネープランの提案など総合的なコンサルティングサービスを提供できるような体制を整備していかなくてはなりません。
また、短期的な取引ではなく、長期・積立・分散投資が必要なので、顧客との信頼関係を構築し退職後も含めた長期的な関係を構築していかなくてはなりません。
リタイヤ期前後の顧客への対応
この時期の人たちは、老後の生活を見越して働き方を検討したり、退職金の見込みの把握を実施し、残りの人生の過ごし方を考えたうえで収支を見直す必要があります。
我々金融サービス提供者としては、お客様の就労延長や計画的な資産取り崩し、リスク許容の変化、長生きリスクに応じたライフプラン・マネープランの提供と、商品サービスの充実が求められます。
顧客の利益に沿った多角的なサービスの提供が必要とされます。
高齢期の顧客への対応
この時期は、心身の衰えから介護ニーズが増大するため、個々人の状況によってマネープランを改めて見直す必要があります。
それと同時に心身が衰えた後も金融サービスを受けられるように備えると同時に、サービス提供者側も業界の垣根を超え連携した総合的なサービスを提供していく必要があります。
環境整備
資産形成・資産承継制度の充実
現在、つみたてNISAやiDeCoなどが個人の資産形成を後押しする制度としてあります。これらの制度は税制面で優遇することにより、現役期からの資産形成を促すために存在しています。
一方で、税の増加や社会保険料の増加、また賃金の伸びの悪さにより可処分所得は増えず、思ったより制度を利用している人が伸びていない現状があります。
より柔軟な制度設計を行うことで、利用者の拡大を図っていくべきだとしています。
また、資産形成をより拡大するためには資産を次世代に円滑に承継するための制度構築も必要です。
例えば、相続時に不動産だと評価額が路線価により判断される一方で、有価証券は時価で評価されるため相続税が過大となる恐れがあり円滑な承継の妨げになる可能性があります。
企業オーナーの高齢問題は重大で、今後10年間で200マン認を超える中小企業オーナーが引退をすることが見込まれています。
その際に行われるべき事業承継は重大な問題です。
非上場株式の評価や売買への媒介など事業承継を円滑に進めるための制度構築が求められます。
金融リテラシーの向上
現在学校教育や職場、自治体などで授業やセミナーを実施するなどの取り組みが行われている。しかし、このような動きは今後ますます人々の生活様式の多様化や金融商品の多様化・複雑化によりますます浸透させていく必要がある。
また、企業においても従業員の金融教育は今後ますます重要となってくる。
アドバイザーの充実
金融リテラシーの向上をしつつも、金融商品は多様化するニーズに応えるためにより多様化し複雑となっていきます。
そのためすべてを自身で判断するのは困難となります。
顧客の目線に立って、サービスを俯瞰しアドバイスできる人が必要となります。
僕たちのような保険募集人もそうですが、その他さまざまな金融市場に関わる人間が、顧客本位の立場でアドバイザーたる使命感を持って臨む必要があります。
高齢顧客保護の在り方
高齢顧客保護のあり方については、金融サービス提供者のみでなく社会全体として取り組んでいく必要があります。
今後一番問題となるのは、認知能力の低下・喪失に伴い金融サービスを受けることができなるリスクです。成年後見制度などが作られていますが、多様な主体が一丸となって対応していく事が求められています。
まとめ
以上、『高齢社会における資産形成・管理』の内容を見てきました。
前提として書かれている老後資金の不足が老後2000万円問題として取り上げられてしまいました。
本報告書の趣旨としては、このような問題に対して我々がどのように対処していくべきなのかを見ている内容です。
老後資金が不足するであろうことは日を見るよりも明らかなことですし、豊かな老後を過ごすためには少しでも資産を形成していくことと、健康でいること以外にはあり得ないのです。
老後2000万円問題はもはや国だけで解決していく問題ではなく、国民一人一人が多様なライフスタイルの中で将来を見据えて経済活動を行っていく事が肝要なのだと思います。
年金制度や年金額に文句を言うのではなく、現状を冷静に分析したうえでしっかりと対応策を練って実行していかなければなりません。
高齢社会はいずれ世界でも問題となってきますが、日本が全世界に先んじて対策しなければいけない立場です。
みんなで知恵を振り絞ってより豊かな未来を作っていきたいものです。
金融業界に携わっているものとしてはその一助になれたら幸いです。
では。